ラグビーワールドカップ2019観戦の旅

2019ラグビーワールドカップ日本大会を、おそらく世界最高レベルでたくさん観戦する予定の私が、自らの記録の意味も含めて運営しております。

日本−サモア1005

38🇯🇵vs🇼🇸19

@豊田スタジアム

 

私、この試合を高みから見物しました。うん、本当に高かったんです。


ワールドカップのチケットは、カテゴリーAからDまでに分類されており、ハーフラインに近いほど良い席とされ高額。もっとも格安なカテゴリーDはゴールポストの真裏です。
チケットの購入希望者は、カテゴリーをどこにするか、すなわち左右軸においては選択することができますが、上下軸、つまりグラウンドからの前後というか遠近というか、または高低については選択することができません。グラウンド間近の最前列になるか、一番上の最上段になるか、まさに運次第なのです。
※この点、座席の前後については、どこが一番いい席かということについて、必ずしも一致した見解はありません。というのも、グラウンドに近い前列はラグビーの迫力、激しさを感じることができるものの、全体を俯瞰できず低いところから見るため、遠いところで何が起こっているのかはわかりにくく、大きいオーロラビジョンで確認することも多くなります。
もちろん逆も然り。後列の席は必然的に高いところから見ることになるので、全体を見やすく戦術やスペースの理解には役にたちますが、選手は遠く時には豆粒くらいにしか見えないということもあります。
※※そういう意味では、比較的観戦初心者の方はラグビーの醍醐味である激しさを感じられる前列を好み、玄人筋は全体を見渡せる後列を好んだりすると言われます。私は、どっちも意味は分かるのですが、どちらかといえば、グラウンドに近い前列が好きです。


そういう意味で、今回、私の購入したチケットの中では、先日の日本ーアイルランド@静岡エコパ(前から2列目)、これから行われる日本ースコットランド@横浜国際(前から5列目)は大当たりです。一方、決勝、準決勝などは軒並み2階席なので、この観点からは外れの部類です。まあ、ジャパンの最も重要な2試合が大当たりなので、全く文句はありません。
が、今日のこの試合はとんでもなく後ろの、遠い、そして高い席になりました。異例の4階席。エレベーターで一番上の階まで行き、そこからも延々と徒歩で登ります。チケットに表示された座席番号は最後列から3つくらい前、しかも豊田スタジアムのバックスタンドは他にないくらい立派な、そびえ立つようなバックスタンドであり、その一番上の方の座席でした。これが怖いのなんの。一歩踏み外せば下まで落ちていきそうな急勾配。スキーなら間違いなく上級者コースとして黒い色で表示される角度です。バックスタンドの一番上の方に掲げられる両国の国旗よりも高い位置なのですから、高所恐怖症の私は生きた心地がしませんでした。試合ははるかに下の方で行われており、ハイパントなのかゴロパントなのか分かりません。しかもこの日は超満員。このスタンドの耐久性は本当に大丈夫なのか?みんなが一斉に国歌斉唱のため立ったり座ったりして平気なのか?元々好きじゃないけど、今日だけは本当にウェーブなんかしてくれるな!とずっと思っていて、集中力は50%くらい減じられました。


そんなこんなでしたが、ジャパンの相手は難敵サモア代表。勝ち点勘定からすると、ボーナスポイントを取るために4トライを取って勝ち点5を積み上げられるか、ということが最大の争点でした。後半35分までで2トライ。あーもうこれは無理だ、勝ち点4でまたスコットランドとの死闘になるのかと誰もが思った残り5分+アルファでジャパンは2トライを奪います。こんな劇的な、美しい展開があるのでしょうか。この5分間だけは、高さやスタンドの耐久性の不安を忘れ、大声で叫んでしまいました。


最後に、この日の会場運営には大きな問題がありました。試合開始はとても遅い19:30。試合が終わって22:00頃から帰宅ラッシュが始まり、約4万人の観客の選択肢は最寄りの豊田市駅からの電車がほとんどという状況で、豊田市駅はとんでもない混雑になりました。
電車の本数も(ある程度の増便があったとはいえ)多くはなく、列はなかなか進みません。私の友人は終電までに乗れず、深夜バスでなんとか名古屋まで帰ったそうです。伝説的な輸送体制を築いた熊谷市程まではなかなか難しくても、そこは天下の豊田市。もう少し選択肢を増やして帰宅の足を分散させるため、シャトルバスを入れるなり、なにか工夫があっても良かったように思いました。

 

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南アフリカ−イタリア1004

49🇿🇦vs🇮🇹3

@小笠山総合運動公園エコパスタジアム

 

今日の試合のテーマは「ジャパンは決勝進出できるか」です。
とはいえまだ予選プールは中盤。「決勝」って、ベスト8のチームが残る「決勝トーナメント」のことだよね、と思った皆様。違います。ここで言う「決勝」はワールドカップ全48試合の最後の試合。勝ったチームがウェブ・エリスカップを獲得できるという、本当に最後の決勝戦のことです。


どういうことか。南アフリカとイタリアの両チームはプールBに所属しており、ここには優勝候補の最右翼、ニュージーランドが同居しています。南アフリカは開幕2日目にニュージーランドに破れており、今日の試合はおそらくプールBの2位争いの試合となります。
一方のジャパンはプールAに所属していて、東京でロシア、静岡でアイルランドを破ったため、現在プールA首位です。まだあと2試合を残しており、長年のライバルであるスコットランドとの最終戦が終わるまで、首位どころか2位までに入って決勝トーナメントに進出することすら、まだまだ決まってはいません、が、私は十分に1位通過の可能性があると思っています。そして、1位通過の場合、ベスト8の対戦相手はプールBの2位チーム。つまり今日の両チームの勝者の可能性が高いのです。
ちなみに、その次のベスト4、準決勝の対戦相手はプールCの2位と、プールDの1位の勝者。これはおそらくフランスとウェールズです。ジャパンは2013年6月には、秩父宮レッドドラゴンを倒しており(23-8)。2017年11月には、レ・ブルーとパリで引き分けています(23-23)。つまり、どちらも勝てない相手ではありません。そしてイタリアには2018年6月に、大分で勝っていますし(34-17)、南アフリカとのワールドカップにおける勝率は100%、ということを総合的に考えると、ジャパンの決勝戦進出を占う一戦ということになるのです。もちろん、強豪南アフリカが格上ということになりますが、イタリアも6カ国対抗で鍛えられており、ときどきアップセットをやったりしますので油断できません。


試合のことを。
この試合、大変珍しいことが起こりました。まずは前半1分、イタリア3番シモーネ・フェラーリが怪我で交代します。さらに、交代で入った18番マルコ・リッチオーニも前半18分に負傷退場。代わりに17番ニコラ・クアーリョが入りますが、おそらく彼はルースヘッドプロップの選手ですので、イタリアにはタイトヘッドプロップの訓練を受けた選手がいなくなりました。こういう場合、安全にスクラムを組むことができないため、以後のスクラムは全てノーコンテスト、双方ともに押し合うことができなくなります。 このことは会場では特に誰も説明してくれないので、その後、何回かスクラムが発生すると周りの人たちからも「あれ、なんで両チーム共いい加減にスクラム組んでるんだろう」という声が聞こえるようになりました。
この現象、人数が少ない高校ラグビーなんかでは時々あるのですが、わたしワールドカップでは初めて見ました。しかも前半18分から残りずっとノーコンテストですから、両チーム共戦術の見直しを迫られることになったことでしょう。特に、南アフリカの方がスクラムが優勢だと考えられるので、スクラムでプレッシャーをかけ、あわよくばペナルティを取るという戦術が取れなくなるというのは結構な誤算だと思いました。
ノーコンテストにしてしまったことについて、イタリアは特になにも不利益を被ることはありません。そうだとすると、スクラムが弱いチームはさっさとノーコンテストにしてしまえば良いんじゃないか、と思ったり思わなかったり…。
しかもこの話には続きがありまして、前半42分、代わりの代わりである17番ニコラ・クアーリョと、1番アンドレア・ロボッティの2人が、南アフリカの8番ドウェイン・フェルミューレンを一緒に抱え上げ、頭から落としてしまいます。しかもほぼプレーと関係ないところでやってしまった「愚行」であり、TMOの結果ロボッティは一発レッドカード。
※この時はお咎めなしだった17番クアーリョも、試合後にレフェリーコミッティの裁定により、ロボッティとともに3試合出場停止の処分を受けました。
つまり、この試合に出たイタリア代表のプロップ4選手は全員いなくなってしまったのです。次の試合、イタリアはスクラム組めるのかな?


こんなこともあり、イタリアは自滅により、元々少なかったアップセットの可能性をほぼゼロまで下げてしまいました。南アフリカは、14チェスリン・コルビが鋭く走って2トライのほか、合計7トライの完勝です。


そして、今日の試合のテーマであるところの、ジャパン決勝戦進出の可能性ですが、やはり並大抵のことではないということが分かりました。南アフリカの強さは強靭なフィジカルだけでなく、鉄壁のディフェンスにあると思います。これをなんらかの形で破らなければなりません。
とはいえ、その舞台に立つためには、明日のサモア戦、そしてプール戦最終日、因縁のスコットランド戦です。ひとつひとつ、登っていってほしいです。

 

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フィジー−ジョージア1003

45🇫🇯vs🇬🇪10

@花園ラグビー場

 

「フライングフィジアンズ」

フィジー代表の愛称です。フィジアンマジックと呼ばれる、ラグビーの常識に捉われない奇想天外なパス回しと見事なハンドリングはフィジー代表の特徴であり、セットプレーや組織力より個人のスキルが要求される“セブンズ”では無類の強さを発揮します。魔法の基礎となるのは、小さい頃から裸足で楕円球に慣れ親しんだことによるハンドリングスキル。リオデジャネイロオリンピック7人制ラグビーでは初のゴールドメダリストになりました(しかも、これはフィジーが個人、団体を問わず初めて獲得した金メダルで、獲得した日はフィジーでは国民の休日になっています。)。しかし、そんな島国の人たちが、釜石でマホトーンをかけられたのが約1週間前。果たして今日は飛ぶことができるのでしょうか。
一方のジョージア。旧ソビエト連邦から独立を果たした小国ですが、ラグビーは強く、日本やパシフィックネイションズの各国と共に「ティア2」の一角を形成しています。派手な個人技はありませんが強固なスクラムを中心としたセットプレーと固いディフェンスでロースコアの展開に持ち込むことを得意とするスタイルで、6カ国対抗参加国(英4カ国、仏、伊)以外の欧州ラグビーを牽引する存在です。また日本代表とは重要な局面で度々テストマッチを行なっており、私の印象としては「一緒に強くなってきた仲間」。HOジャバ・ブレクバゼがサンウルブズで活躍したこともあり、近しい存在として応援しています。
この、対照的なスタイルを持つ両国が、高校ラグビーの聖地花園ラグビー場相見える、こんなにワクワクする試合はありません。どちらもティア1の強豪ではなく、大分からの連戦で、平日昼間の試合であるとしても、私は迷いなく観戦を決めました。
試合の話も少し。開始前から降り始めた雨は、時折強くなったり、と思ったら晴れ間が見えたり、不安定な様子です。スリッピーな環境は、セットプレーと堅実なスタイルのジョージアに有利、マジックを封じられる可能性のあるフィジーに不利、かと思いました。しかし今のフィジーは、かつてのようなハンドリングスキル、ランニングスキル頼りのチームではありません。前半、セットプレーや組織的ディフェンスに難があるという、長年言われ続けた弱点を見事に埋めるようなプレーを見せます。スクラムも、藤島大氏が「スクラメイジャー製造工場」と評したジョージアに負けず、時には押し返すシーンすら見られました。そして後半、晴れ間が見え始めたころから、フィジーが飛びはじめます。素晴らしいハンドリングスキル、ランニングスキルの連発。グラウンドを縦横無尽に走り回り、どこからでもパスが繋がる。まさにマジックを見ることができました。特に両ウイング、11番セミ・ランドランドラと14番ジョシュア・トゥイソバのランニングはセブンズを彷彿させるものでした。今大会のフィジーは、持ち味の自由奔放なラグビーに加えて、組織的な規律も整っており、とても魅力的なチームです。その分、ウルグアイに負けた第2戦がとても痛いのですが、きっと来週は大分で、ウェールズと好試合を繰り広げてくれると思います。

帰り際、ラグビー場から東花園駅に向かう途中の一本道で、地元のおっちゃん(きっともういい感じにアルコールを摂取している)がジョージアの旗を背負った一角を見つけ「ジョージア、グッドグッドゲーム、ネクスト、ウィン!(そのまま、カタカナで発音していました。)」と声をかけていました。力なく手を挙げたジョージア人に「ところで、ネクスト、どこのカントリー?(同じく、そのまま。)」と聞くと、ちょっと迷って「Australia.」と答えます。おっちゃん「オーーー、ノーーー。うん、でもきっとウィンやで!(同)」。ここも、ワールドカップが包含するファンゾーンのひとつだと思いました。

 

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