ラグビーワールドカップ2019観戦の旅

2019ラグビーワールドカップ日本大会を、おそらく世界最高レベルでたくさん観戦する予定の私が、自らの記録の意味も含めて運営しております。

ニュージーランド-カナダ1002

63🇳🇿vs🇨🇦0

@大分スポーツ公園総合競技場

 

昨日一日のオフを挟んで、今日からツアー第2弾の始まりです。前試合のテーマは「スコットランドがBPを取れるか」でしたが、今日のテーマは「優勝候補オールブラックスはどれだけ強いか」です。


今日の会場は大分市スポーツ公園総合競技場。私、大分市は人生初上陸かもしれません。ワールドスポンサーでもあるCANON創業の地とのことですが、よくこんな遠くまでワールドカップを連れてきたなあ、というのが第一印象でした。


ニュージーランドは開幕直後、南アフリカとの死闘を見にいきましたが、それ以来の2試合目です。今日のスタジアムも屋根付き閉めっぱなしのため大変暑く、試合後に選手達から「石鹸を付けたボールみたいだ」と言われるくらい、よく滑っている様子でした。これ、どうにかならないものですかね?雨が降ってなければ屋根を開ければ良いと思いますし、ここは人里離れているので、騒音問題も気にならないと思います。ここで、準々決勝2試合も開催するんですよね。エディ・ジョーンズさんあたりは「そんなの当たり前だ。我々はちゃんと対策してきた」とか言いそうですが。


最強軍団オールブラックスの強さは、とにかく基本に忠実、当たり前のことをミスなくできる、というところにあるとよく言われています。華麗なパスや力強いランはよく目立ちますが、私は「キャッチ」にも特徴があると思っています。本当に落とさない。まるで手のひらに吸盤がついているかのようです。その彼らがポロポロ落とすのですから、厳しいコンディションだったのでしょう。


しかし、それでも、王者は王者でした。開幕直後の南アフリカ戦に先発したメンバーは11人が入れ替わっているにもかかわらず、全く見劣りしません。
3番手のHOであるリーアム・コルトマンが力強く前に出ると、大会直前にバックアップから召集されたFLシャノン・フリゼルが鋭くディフェンスを抉ります。ピークを過ぎた感もあったスーパースター、CTBソニー・ビル・ウィリアムスが躍動し、LOパトリック・トゥイプロトゥが激しいタックルの後ボールをもぎ取ります。これは凄いことで、もしこのメンバーが南アフリカ戦のメンバーと試合をしたら、どちらが勝つのか。要はオールブラックスが二つあるようなものです。長く、いろいろなことが起こるワールドカップで、この層の厚さは大きな武器と言えます。
そしてもう一つ、FBボーデン、LOスコット、WTBジョーディのバレット三兄弟が同時に先発しました。全員がトライをするというおまけ付きです。ニュージーランドの田舎で牧場を営んでいるというご家族はどれだけ誇らしいことか。彼らは小さい頃から牧場の仕事を手伝い、自然の中で走り回っていたそうです。私も、いまからでも転職を検討しなければと思いました。
一つだけ気になるのは、WTBリーコ・イオアネの調子です。父は元サモア代表で、日本のリコーにてプレーをしたエディ・イオアネ氏、兄は直前までオールブラックスのスコッドだったブルーズのNO8アキラ・イオアネです。16年にオールブラックス入りしてから、爆発的な走りでトライを量産したニュースターですが、ここ数試合は少し迷いのあるようなランニングが気になっていました。果たして、ワールドカップ 初戦の南アフリカ戦は先発を外れます。今日の試合も一つトライをしましたが、ジュリアン・サヴェアやワイサケ・ナホロ、ネヘ・ミルナースカッダーからポジションを奪い取った爆発力はまだ見られません。後半、SBWに代わってWTBベン・スミスが入ってからはCTBのポジションにチャレンジしていましたが、リーコはやはり、一番外側で見たいところです。


大分でニュージーランドの強さを確認し、明日は花園です。飛行機で大分空港から伊丹空港に向かいますが、私は大の飛行機嫌いなので、次に気になるのは乗る飛行機のサイズになります。

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スコットランド−サモア0930

34🏴󠁧󠁢󠁳󠁣󠁴󠁿vs🇼🇸0

@神戸市御崎公園球技場

 

ワールドカップでは、1次のプール戦が全部で40試合、決勝トーナメントが8試合あるわけですが、時間やお金による制約や、そもそも両立が物理的に不可能なカードもあるため、見に行く試合を選択する必要があります。私のように今回は一生に一度のイベントだと覚悟を決めても、その中でも一定の基準をもって観戦カードを選ばなければなりません。


私は今回、同じことができる環境にある稀有な人物とほとんど全ての行動を共にしている訳ですが、今回チケットを取る上で、2人で決めた方針は、①ジャパンの試合は全部見る(決勝トーナメントも含めて)、②アップセットが起こる可能性がある試合は見たい、③特に見たい国(ニュージーランド、フィジーなど)の試合を見る、④ジャパンと同プールの試合を見る、というようなものでした。


特に、今回はジャパンが素晴らしい戦いを見せてくれているため、ジャパンの決勝トーナメント進出に影響のある④の同プールの試合が重要になってきます。その意味で、ジャパンの最大のライバルであるスコットランドの動向は大変気になります。
さらに、ワールドカップのプール戦のレギュレーションは大変よく考えられており、今回のような接戦の場合はボーナスポイントの有無が大事になってくるため、本日のサモアスコットランド戦の最大の関心事は「スコットランドが4トライ以上を取って勝つことができるのか。」という点になりました。


本日の神戸はまだまだ暑く、屋根を締め切ったままの御崎公園球技場は大変蒸し暑い状態になりました。観客が暑い思いをするだけなら、ビールもたくさん売れるでしょうから良いのでしょうが、湿気や汗でボールがよく滑ります。子供の頃から楕円球に慣れ親しんだであろうサモアの人たちも良くボールを落としました。スコットランドも落としていましたが、やはり洗練された試合巧者。9番クレイグ・レイドロウ、10番フィン・ラッセル、15番スチュワート・ホッグを中心に要所要所を抑え、得点を重ねていきます。


特にSOラッセルのランニングスキルは高く、ジャパンにとってはきわめて危険なランナーです。隙があれば自ら走ってきますので、ジャパンは外側からかぶり気味で早いプレッシャーをかける必要があります。


サモアは、しつこくディフェンスをしました。後半56分にスコットランドがペナルティトライを挙げ、この時点で3トライ。あと一つでボーナスポイントということになってから、激しく攻めるスコットランドに対して、粘り強く身体を張ったタックルを続けます。
クライマックスは後半74分。スコットランドの11番ショーン・マイトランドが左からライン際を疾走。トライラインからかなり前から姿勢を低くし飛び込みます。サモアの11番、既に一度シンビンを受けているエド・フィドウが追い、身体を投げ出してマイトランドを押し出そうとします。コーナーでボールが弾け、TMOに。トライに届いていないのは間違いないのですが、レフェリーの判定は、フィドウのノーバインドタックルがなければトライになったはずということで、ペナルティトライになりました。フィドウは2回目のシンビンで、レッドカード。


私の目には、タックルがなくてもノックオンだったように見えましたが、これでスコットランドは4トライ。ボーナスポイントです。サモアの必死なディフェンスには感動しましたが、やはりソツがないスコットランド。2015と同じような展開になってきました。やはり、これを超えるには真っ向勝負に勝つしかなさそうです。

 

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オーストラリア-ウェールズ0929

25🇦🇺vs🏴󠁧󠁢󠁷󠁬󠁳󠁿29

@東京スタジアム

 

昨日静岡でとんでもないものを目撃することができたのに、今日は今日でティア1の強豪同士がぶつかりあう。なんという贅沢な、非日常でしょう。大会8試合目は、東京スタジアムウェールズーオーストラリア戦です。


東京スタジアム、開会式&開幕戦に続いて2試合目です。初戦はメインスタンド寄りの席だったので気付きませんでしたが、バックスタンド側の席だと最寄りの飛田給駅からは遠いですね。グラウンドが見えているのにぐるーっと回らされて、全然中に入れないのには難儀しました。
※私と同じくらいのラグビー狂である弟によれば、東京の様々な駅から出ているシャトルバスのターミナルはバックスタンド寄りにあるらしく、今後は座席の位置を確認して交通手段を決めた方が良さそうです。


今大会、ウェールズは優勝候補と言えます。なんと言っても今年のシックスネイションズを制覇していますし、タレントも揃っています。一昨年のブリティッシュ・アンド・アイリッシュ・ライオンズのNZ遠征にてキャプテンを務めたFLサム・ウォーバートンは引退してしまいましたが、138キャップを持つLOアラン・ウィン・ジョーンズ主将、SOダン・ビガー、WTBジョージ・ノース、FBリー・ハーフペニーなどは健在。そして彼らを指揮するのはライオンズのヘッドコーチでもある智将、ウォーレン・ガットランドです。
一方のオーストラリア。前大会の準優勝チームです。両フランカーにマイケル・フーパー主将、デイビット・ポーコックを配置し、スコット・シオ、トル・ラトゥ、アラン・アラアラトアの第1列は強烈です。昨年のブレディスローカップオールブラックスのディフェンスを切り裂いた怪鳥イズラエル・フォラウを大会前に失ったものの、CTBサム・ケレビの力強さは健在ですし、カートリー・ビール、ジェームズ・オコーナー、リース・ホッジなど、複数ポジションをこなすユーティリティバックスを揃えているのも特徴だと思います。


試合の話も少し。開始0分、史上最速らしいですが、ウェールズは10ダン・ビガーのドロップゴールで先制します。そのまま序盤はウェールズが先行し続ける展開。キックの使い方も効果的です。前半最後にはSHガレス・デービスが相手のSHからのパスをインターセプトして独走し、23-8まで点差を広げました。オーストラリアは初戦もそうでしたが、どうもエンジンが掛かるのが遅いように思います。今回、コントローラーとなるべき10番が定まらず、クリスチャン・リアリイファノとバーナード・フォーリーを併用する形になっていますが、その辺りも関係するのでしょうか。
しかし後半4分に、オーストラリアはSOバーナード・フォーリーを早々に替え、22番マット・トゥムアにタクトを預けます。トゥムアは全てランで仕掛けていくのでオーストラリアのラインスピードが飛躍的に上がり、チーム全体が前懸かりになるのを感じました。ここから立て続けに2T2G1PGを加え、🇦🇺25-26🏴󠁧󠁢󠁷󠁬󠁳󠁿まで追い上げました。さすがプールDの覇者を決めるべき試合。しかし、ワラビーズはあと1本が出ず、逆にPGを返され万事休すです。
オーストラリア代表は、前半に取られすぎた感がありますね。今後を見据えると、3人いる10番をどう使うかということがカギになりそうです。そして、やはりフォラウがいれば!と思ってしまいますね。ウェールズは優勝候補の一角といって良さそうです。


最後に。後半の途中でオーロラビジョンに、帽子を被ってTシャツ姿のエディ・ジョーンズ氏の姿が一瞬写りました。どちらのファンか分かりませんが、会場は敏感に反応してブーイング。あれ、どういう意味だったんでしょうね。日本人はみんなエディさん嫌いじゃないだろうし、母国のライバルを率いていることをオーストラリア人が気にしてるのか、両チームともに決勝トーナメントに向けた偵察を嫌がってるのか。先日のイングランドアメリカの試合でも、エディさんは試合前のアメリカの練習をジーッと見つめていましたが、彼に見られるのは嫌でしょうね。少なくとも、常に注目を集めるスターの1人であることは間違いないと思います。

 

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日本-アイルランド0928

19🇯🇵vs🇮🇪12

@小笠山総合運動公園エコパスタジアム

 

私、2015年9月19日に南アフリカ戦を観てしまってから、おそらくもう、ラグビーの試合でこれと同じくらい感動することはないだろうと思っていました。それは、日本ラグビーにとっては素晴らしいことで、もういつでもティア1の国に勝てるレベルになったんだ、ティア1に勝ったからっていちいち感動してなくてもいいレベルまで来たんだ、ということなのですが、それでも一抹の寂しさはありました。


もう一つ、私、今回のワールドカップをどうやって楽しむのが一番良いのか、ということを3年前くらいから塾考する中で、別に盛り上がりたい訳じゃないし、余すことなくじっくりとラグビーを楽しむには自宅でテレビ観戦が一番いいんじゃないか、とも思ってました。悩んだ結果、結論としては後からテレビでも見ればいい、ということでたくさんスタジアムで観戦することにしたのですが、大会直前には、やはりこんなに時間とお金を使って意味があったのか?という迷いも少しありました。


今日、ジャパンが、そんな寂しさや迷いを全部吹き飛ばしてくれました。


ラグビーの試合を見ていて、感動して涙が出てきたということは、多くはありません。高校ラグビー大学ラグビーは、限られた時間の中で努力するという要素とともに感動を呼び、特に花園で、負けたチームの試合後の様子を見たり、選手達に対して先生が話すことを聞いたりして涙が出てくることがありますが、これは試合後の描写や人間ドラマが誘う涙。ラグビーの試合、というかプレー自体を見ながら涙が出てきた経験は生涯で2回だけです。1回は件のブライトンの前半、ずっと見てきたジャパンが今まで見せたことのないトリッキーなキックオフやロングスローをやるのを見て、ああ、この人達は全てをこの時のために掛けてきたんだ、と思い至り、涙が出てきました。そしてもう1回が今日。その瞬間は前半34分、自陣22mラインを少し出たところで組まれたスクラムで、ジャパンが重いアイルランドスクラムを捲りあげてペナルティーを取ります。ガッツポーズの8人。祝福と感謝に駆け寄る9.10.12.14。ああ、この人達は全てをこの時のために掛けてきたんだ。隣の息子にこの景色の尊さを少しでもわかって欲しくて、高く高く抱き上げました。


後はもうずっと絶叫でした。

中村亮土の躊躇なきタックル。ティム・ラファエレの華麗なオフロード。ジャパンが小笠山に降らせたタックルの雨の25%は、兄弟というより親子くらいの年の差のセカンドロー2名によるものだったようです。リーチマイケルの意地。レメキ・ロマノ・ラヴァの変わらぬ強気。田中史朗の経験からくる落ち着き。選手リストの姫野和樹の名前の横に二重丸を付けてない欧州のスカウトはいないでしょう。ピーター・ラブスカフニを、数分でも良いからテストマッチでプレーさせておかなかったスプリングボクスときの首脳陣の後悔はいかほどか。堀江翔太のワールドカップ2試合のプレーを一言で表現するなら「献身」です。水を持って走りたくさん喋る徳永祥尭。そして、本人は否定する稲垣啓太の涙。


最後に、田村優のコンバージョンキックの時に静寂を守ってくれたゴールポスト裏のアイルランドの人たち。こちらのフットボールにおいてそれは普通のことなのですが、それでもお礼を言いたいです。今度ビール奢ります。息子にもちゃんと教えます。

 

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アメリカ-イングランド0926

7🇺🇸vs🏴󠁧󠁢󠁥󠁮󠁧󠁿45

@神戸市御崎公園球技場

 

昨日、釜石でアップセットを目の当たりにしました。数ある要因のうちの一つとして、やはり「魔の中3日」があるのではないかと思い、そうすると今日は神戸がブライトンになるのでは、なんて期待をしてしまいます。
大会7日目の今日は、釜石から神戸に移動して、フレッシュなアメリカが中3日のイングランドに挑む一戦です。いま、さらっと「移動して」と言いましたが、この移動は結構大変でした。前日の釜石は17時頃鵜住居復興スタジアムを出て、釜石の魅惑的な夜は涙を飲んで諦め、仙台に向かいます。仙台で一泊し、翌日仙台空港から伊丹空港へ空の旅。伊丹から三ノ宮までバスで移動し、いよいよ神戸入りでした。この最後のバスは空いていましたが、その中にひとり、「釜石、ラグビー」のキーワードが入ったTシャツの男性がおり、心の中で同じ旅程を組む同志に敬意を払いつつ、御崎公園球技場を目指します。
この試合、今までで最も外国人観客が多いように思いました。後から聞くところによれば、イングランドファンが来日数でいうと最も多いらしいので、なるほどという感じです。


試合の話も少し。魔の中3日に対し、さすがに智将エディー・ジョーンズさんは闘い方を熟知しており、初戦とは大幅にメンバーを変えてきました。そして、それでも全く見劣りしない層の厚さは、さすがのホームユニオンです。注目は昨年の日本戦で活躍した新星、WTBジョー・コカナシンガ。
一方のアメリカは、近年ラグビーに力を入れ始め、国内プロリーグ「メジャーリーグラグビーMLR)」が始まっています。陸上選手だった7人制代表、カーリン・アイルズ(今回は代表入りせず)のように他競技からも引き抜いてきており、アメフトNFLの選手であったCTBポール・ラシケは、ぱっと見アメフトの防具をつけたままこちらに来てしまったかのような迫力ある体型です。
そんな両チームの対戦でしたが、とにかくイングランドの強かさが際立つ内容でした。とにかく各選手の基本スキルが高く、よく走ります。特にFW第二列、第三列の走力が光りました。彼らをコントロールする10番ジョージ・フォードはマンオブザマッチに相応しい活躍。キャプテンの12オーウェン・ファレルとのダブル司令塔も機能していました。彼らを、エディー・ジョーンズ氏のコーチングチームが率いていることを考えると、これは間違いなく有力な優勝候補だと思います。
アメリカ代表は、最後にトライを一つ返すのが精一杯でした。ただ、注目していた13ラシケ選手は、パワープレイ一辺倒ではなく、細かいパスやキック処理も上手でした。
最後に、一つ気になったことを。御崎公園球技場は屋根が開閉式ドームですが、当日はずっと締め切ったままでした。これにより大変蒸し暑く、観客はみな紙や団扇で仰ぎながら観戦していました。喉が渇いてビールがたくさん売れるためか?などと穿った見方をしていましたが、後から聞くと近隣への騒音対策のためとか。いやいや、だったら召致しないでくれよ、と思います。

 

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フィジー-ウルグアイ0925

27🇫🇯vs🇺🇾30

@釜石鵜住居復興スタジアム

 

対戦相手にトライをされた時、トライを許してしまったチームがインゴールでどのような振る舞いをするか、ここに着目すると、チームの雰囲気が分かるような気がしています。全員が一つに固まって次のプレーの確認をしているチームは間違いなく良いチーム。そこで中心になって話している選手はリーダーに違いありません。トライの原因になってしまったプレーをした選手が仲間に謝っていて、それを仲間たちが心から受け入れているチーム、これも正しい。
一方で、華麗なステップを武器とするエースランナーが、俺は関係ねえぜ、という顔をしているチーム、ちょっと不安になります。真剣にミーティングをしている人達の隣で、キックチャージに向かう選手がいるチーム、意思疎通は大丈夫か?


この日、ウルグアイ代表は明らかに格上とされたフィジー代表を相手に大金星をあげました。1年前には大差で負けている相手に、ワールドカップの場で勝ったのです。


この日、釜石鵜住居に集まった1万4000人の観客のほとんどは、釜石という日本ラグビーにとって特別な地でワールドカップを見たい、復興の実感を得たい、そしてフライングフィジアンズの華麗なマジックを見たい、こんな目的で来場したのではないでしょうか。私もそうです。特に、オーストラリアを震撼させたフィジー両ウイングの爆発的な走力を目の当たりにすることが、私の第一の目的でした。
正直、ウルグアイの勝利は期待していませんでした。


しかし、この日の釜石では、アップセットが完成する条件が充足されていました。
一つ、「格下」チームの周到な準備。ウルグアイ代表がこの試合にターゲットを絞って来たのは明らかでした。特に注目すべきは上半身を狙った高めのタックル。フィジー代表の各選手の強靭なフィジカルを想定すると、できればタックルに行きたくない、でもどうしても行かなければいけないなら、せめて太い腕を掻い潜るような低いタックルで、と考えがちです。ですがこの日のウルグアイ代表は勇気を持って高めのタックルを徹底しました。当然、弾き飛ばされる人も出ますが、このタックルが成功するときフィジーの選手は自由なボールのコントロールを失い、マジックのようなオフロードパスは封印されました。
二つ、「格下」チームがタックルの雨を降らせるような守りの展開。上述のような守備戦術を採ることにより、うまくいかずに弾き飛ばされる人も出ますが、ウルグアイ代表はそれでも構わずタックルの数で勝負しました。試合全体でのタックル数はフィジーの95に対し、ウルグアイは181。ほぼ倍の矢を放ちました。ミスタックルも倍以上ですが、構わずに入り続けたことが奏功しています。
最後は幸運。この日、フィジー代表は通常であれば入れるべきゴールキックを3本外しました。この日ワールドカップ初戦でフレッシュなウルグアイに対して、フィジーはオーストラリアとの激闘後地獄の中3日だったことも影響しているはずです。後半、左サイドを攻めたフィジーは人数にして3対1の絶好のチャンスを作るも、パスが唯一追ってきたウルグアイ選手の胸に入るというプレーもありました。ラグビーの神様が、ここ釜石をブライトンにしようとしているようでした。


試合時間終了の銅羅が鳴ったとき、スコアは30-22、ウルグアイが8点リードしていました。もうどうやってもフィジーの逆転はなくなりましまが、フィジー代表は最後まで攻め続け、21番ニコラ・マタワル選手がトライを返しました。30-27。残すはトライ後のコンバージョンキックだけですが、これが入ってもフィジー代表は追いつけませんし、勝ち点についても、このゴールの成否は関係ありません。しかし、ウルグアイ代表選手たちは全員がトライライン上に横一列で並び、キッカーの22番、本来は10番を付けているべきベン・ヴォラヴォラ選手が動き出すと同時に全員で猛然とキックチャージを敢行します。顔には充実の笑み。チャージのために伸ばした両腕は、そのまま勝利のガッツポーズになりました。ウルグアイ代表、良いチームに決まっています。

 

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サモア-ロシア0924

34🇼🇸vs🇷🇺9

@熊谷ラグビー場

 

昨日は大会が始まってから初めてのオフ!だったので、溜まった仕事を片付け、今日は熊谷にサモアーロシアを見に行きました。プールAにおける日本のライバルである両国の試合を見たいということと、個人的には学生時代に何度も試合をした熊谷でワールドカップが開催されるという感慨もあり、観戦を決めました。
当日は、ほぼ午前中で仕事を終え、荷物をまとめて熊谷に向かいます。今日から3泊4日の観戦ツアー第一弾なのですが、これが終わる金曜日は朝から仕事の予定なので、スーツ一式を東京駅のコインロッカーに預けて、熊谷へ。
と、思ったら東京駅丸の内口に大きなバス二台と、赤を中心とした揃いのジャージを着た大きな人間数十人が。これはRWC関連に違いないと思い急いで近づいたら、なんとウェールズ代表ご一行でした。街中で、普通にウェールズがいること、改めてワールドカップのすごさを感じつつ、熊谷に向かいました。
もう一つ触れなければならないことは、熊谷市のホスピタリティが素晴らしかったこと。ひとりの観戦難民も出さないぞ、という気概を感じる大量かつ多方面輸送大作戦が展開されており、近隣の駅複数にどんどんシャトルバスが来ます。パークアンドライドもうまくいっているようで、熊谷駅から遠いラグビー場までのアクセスは本当にスムーズでした。
ラグビー場自体も、メインとバックを入れ替えるという荒業をやってのけた大改修により、ワールドカップを迎えるに相応しいスタジアムに変身していました。ただ、放送設備の関係だと思うのですが、試合前の整列&国歌斉唱はなんと選手全員がバックスタンドを向いて実施されることに。バックにいた私はラッキーでしたが、来賓の方々の関係は大丈夫なのかと少し心配になりました。
もう一点だけ、この日の観客は、当該国のラグビー人気の関係か、交通手段の関係か、多くは日本人でした。この点はこれまでの3試合と大きく異なった部分です。また、どのような動員が掛かったのかは分かりませんが、いくつもの地元中学から中学生の団体が来ていました。この大会、チケットの値段やプレミア性から、子供(特に中学生、高校生)の観戦が少ないことが残念だなあと思っていたので、この試みは良かったと思います。ひとりでも、ワールドカップ観戦をキッカケにラグビーに関わってくれたらと思います。


試合のことも少し。まず思ったのは、中3日は私が考えていた以上にキツイんだろうな、ということです。ロシアは今回日本との開幕戦から中3日。一方、サモアは初戦なのでフレッシュでした。
次に、これから日本が当たるサモア代表のことについて。相変わらず、持ち前の強靭なフィジカルを活かしたパワーラグビーのスタイルだと思います。キックを使った縦の変化を用いた攻撃はほとんどなく、どんどん力強いランナーをぶつけてきます。ロシアもよく耐えていたと思いますが、どんどんコンタクトフィットネスが落ちてくる感じかうかがえました。このような戦術は、トップ選手が欧州のチームに点在していることによりなかなかチームとしての時間をかけられないというチーム事情があるのだと思いますが、今の日本は止められると思います。大会直前に復帰した15番、ティム・ナナイ・ウィリアムス選手は相変わらず鋭いステップを見せますが、全盛期のキレはないよう思いました。同じく復帰組の10番トゥシ・ピシ選手も、私はサントリーサンウルブズでも見ていて好きな選手ですが、怖い相手かという意味では同様だと思います。
そして、この国には切っても切れないディシプリン問題。この日も前半に立て続けに二つ、ハードヒットがイエローカード対象になってしまいました。
サモアが大会期間ずっとこのままなら、カードトラブルにより13番レイ・リーロー選手を欠き、怪我により8番アモサ選手を失ったことを加えると、日本にとって難しい相手ではなさそうです。
ロシアは、サモアに二枚のイエローカードが出て15対13になった所で加点できなかったのがポイントでした。昨年の日本戦で攻守にキレのある動きを見せていた22番ラミール・ガイシン選手も不発でした。
さて、今日から観戦ツアー第一弾です。明日は釜石にて14:15キックオフなので、大宮まで戻って宿泊し、朝早くの新幹線に乗ります!

 

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