日本-アイルランド0928
19🇯🇵vs🇮🇪12
私、2015年9月19日に南アフリカ戦を観てしまってから、おそらくもう、ラグビーの試合でこれと同じくらい感動することはないだろうと思っていました。それは、日本ラグビーにとっては素晴らしいことで、もういつでもティア1の国に勝てるレベルになったんだ、ティア1に勝ったからっていちいち感動してなくてもいいレベルまで来たんだ、ということなのですが、それでも一抹の寂しさはありました。
もう一つ、私、今回のワールドカップをどうやって楽しむのが一番良いのか、ということを3年前くらいから塾考する中で、別に盛り上がりたい訳じゃないし、余すことなくじっくりとラグビーを楽しむには自宅でテレビ観戦が一番いいんじゃないか、とも思ってました。悩んだ結果、結論としては後からテレビでも見ればいい、ということでたくさんスタジアムで観戦することにしたのですが、大会直前には、やはりこんなに時間とお金を使って意味があったのか?という迷いも少しありました。
今日、ジャパンが、そんな寂しさや迷いを全部吹き飛ばしてくれました。
ラグビーの試合を見ていて、感動して涙が出てきたということは、多くはありません。高校ラグビーや大学ラグビーは、限られた時間の中で努力するという要素とともに感動を呼び、特に花園で、負けたチームの試合後の様子を見たり、選手達に対して先生が話すことを聞いたりして涙が出てくることがありますが、これは試合後の描写や人間ドラマが誘う涙。ラグビーの試合、というかプレー自体を見ながら涙が出てきた経験は生涯で2回だけです。1回は件のブライトンの前半、ずっと見てきたジャパンが今まで見せたことのないトリッキーなキックオフやロングスローをやるのを見て、ああ、この人達は全てをこの時のために掛けてきたんだ、と思い至り、涙が出てきました。そしてもう1回が今日。その瞬間は前半34分、自陣22mラインを少し出たところで組まれたスクラムで、ジャパンが重いアイルランドのスクラムを捲りあげてペナルティーを取ります。ガッツポーズの8人。祝福と感謝に駆け寄る9.10.12.14。ああ、この人達は全てをこの時のために掛けてきたんだ。隣の息子にこの景色の尊さを少しでもわかって欲しくて、高く高く抱き上げました。
後はもうずっと絶叫でした。
中村亮土の躊躇なきタックル。ティム・ラファエレの華麗なオフロード。ジャパンが小笠山に降らせたタックルの雨の25%は、兄弟というより親子くらいの年の差のセカンドロー2名によるものだったようです。リーチマイケルの意地。レメキ・ロマノ・ラヴァの変わらぬ強気。田中史朗の経験からくる落ち着き。選手リストの姫野和樹の名前の横に二重丸を付けてない欧州のスカウトはいないでしょう。ピーター・ラブスカフニを、数分でも良いからテストマッチでプレーさせておかなかったスプリングボクスときの首脳陣の後悔はいかほどか。堀江翔太のワールドカップ2試合のプレーを一言で表現するなら「献身」です。水を持って走りたくさん喋る徳永祥尭。そして、本人は否定する稲垣啓太の涙。
最後に、田村優のコンバージョンキックの時に静寂を守ってくれたゴールポスト裏のアイルランドの人たち。こちらのフットボールにおいてそれは普通のことなのですが、それでもお礼を言いたいです。今度ビール奢ります。息子にもちゃんと教えます。